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俳句入門講座

ようこそ 俳句の世界へ

住職の俳句

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億年

2018-07-15
蒼天の水禍を知らぬ雪加かな
 
俳人といえば夏帽なる裾野
 
佐比売野の稜線はるかなる雪加
 
詩人をひと括りなる大夏野
 
上五さへ浮かばぬほどの暑さかな
 
人間の営み遠き星月夜
 
星飛んで億年の空改まる

夏帽

2018-07-08
夏帽を脱ぐ恥らひの角度かな
 
行列の先の先なる氷菓かな
 
たくましき背たくましき汗を置き

2018-06-22
蛍火の皆詩人めく顔なりし
 
一日を蛍川へと流しけり
 
蛍火の消えて宇宙の残りたる
 
ほうたるの面影となる星空と
 
ほうたるの闇人間の闇のあり
 
ほうたるを見てほうたるに見られをり
 
蛍火の影とし夜の伸びてゆく
 
蛍の一灯を継ぐ朝日かな
 
永遠は一刹那なる初蛍

香水

2018-06-21
香水の香の濃淡にすれちがふ
 
雑踏の香水にある孤独かな
 
行列の日傘の先にぐんぐんと
 
行列の後ろへ伸びてゆく暑さ
 
雑踏の細き南風でありにけり
 
涼風の雨のにほひでありにけり
 
大役を終えてワインや灯涼し
 
待ちわびしビール貫くものとなる
 
夕焼に一直線の丘であり
 
遊び子の徐々に夕焼色となる
 
蝉もまたインドの音色への過客
 

薄暑

2018-05-16
日常をまっさかさまの朝寝かな
 
全身でわつと泣く人夏来る
 
一日の果てに佇む蜥蜴かな
 
玻璃越しに伸びる七色なる薄暑
 
母の日を片隅に置く車窓かな
 
さびしきは咲ききつてゐる牡丹かな
 
蛞蝓のぽつりと風の静かなる
 
新緑の雲たくましき白さかな
 
さへづりの雲の隙間にありにけり
 
ため息もこの夏空の一部分
 
春愁を遠ざけたくて星の下
 
快晴といふ春愁の一部分
 
空浅くして雲遠くして薄暑
 
一群の雲ほどけゆく薄暑かな
 
ビル群の端に一人酒なる夜長
 
夏帽を被れば詩の人らしく
 
歓声の消息にある大牡丹
 
吟行の涼しき声の集ふ寺
 
緑陰の人を寡黙にしてしまふ
 
吟行の皆緑陰を求めつつ
 
吟行の涼しき静寂ありにけり
 
緑陰に座れば自由なる心
 
珈琲の香に老鶯の紛れ込む
 
万緑を背に俳人の小さきこと
 
吟行の夏帽ぷかりぷかりかな

吟行は人を自由に夏の寺
 
別世界なる万緑の寺なりし
 
万緑に別の時間のあるやうな
 
石庭のその先にある緑陰へ

住職原稿(日本伝統俳句協会機関紙「花鳥諷詠 一頁の鑑賞」)

花筒に水満つる音墓参     県 越二郎

花筒に水満つる音墓参    県 越二郎

(昭和十二年『ホトトギス雑詠選集』秋の部より)

 

私は寺の息子として三十八年前生を受けた。

 

自坊の敷地内に五十基程の墓石が並ぶ墓地があり、彼岸、盆の時期には参詣が絶えない。

墓参の作法として花の水替えというものがある。

古くなった花を取り除き、花筒に水を注ぐ。

日の光を帯び、注がれてゆく水は墓地という地の利もあるのか、より透明で清潔に見える。

 

「トクトクトク」という音がだんだん細くなり、高くなってゆく。

やがて花筒に水が満ちるのだが、そこに音は無い。ただ、花筒の頂を満たす水面がゆらめき、ヒソヒソと囁いているように見える。

 

揚句の作者はそんな水の囁きを聞いておられるのではないかと思う。

 

墓参とはそれなりに緊張感を伴うもので、静寂を伴うものである。

墓石に対峙する作者は、先立って行かれた有縁の方の声なき声を、花筒を満たす水の光に聞いておられるのではないだろうか。

 

浄土には八つの功徳を有す水が満ちているという。残された作者の命を満たす音なのかもしれない。

kenshi

蜩のなき代わりしははるかかな   草田男

蜩のなき代りしははるかかな    草田男
(昭和四年『ホトトギス雑詠選集』秋の部より)
 
幼い頃、夏休みになれば友達と森深く分け入り、虫取りに励んでいた。
背丈を優に超える虫取り網と共に、木々の隙間を駆け回り、気づけば夕刻。
「さあ帰ろう」と森を抜けてゆく背に何時もあったのが、蜩の声であった。
不思議とその蜩を捕まえようと戻る者は誰もいなかった。
 
大人になり、蝉の声に方向があることを感じる。
朝方に鳴く蝉の声は、土砂降りの雨のように空から降って来る。
一方、夕刻の蜩の声は、逆に空へと上り、抜けてゆく。
 
掲句は草田男初期の句である。
草田男はどこか潔癖で神秘的な蜩の声の律動が、空へと上ってゆく様を「はるかかな」と詠んだ。
青年期より度々精神を病んだ草田男にとって、蜩に導かれたその空はたまらなく広く、自分が解き放たれる救いの場所であったのではないか。切れ字の「かな」が景をどこまでも広げている。
 
子供の頃、誰も蜩を捕まえようとしなかった理由が今、少し分るような気がする。
kenshi
 

俳句入門講座17

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俳句入門講座15

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俳句入門講座14

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俳句入門講座13

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俳句入門講座12

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俳句入門講座1~11

俳句入門講座1~11
俳句の基本について仏婦会報「まなざし」にて連載しています。

住職の掲載作品

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角川「俳句」2月号

2018-01-31
角川「俳句」2月号
特集「高野素十の写生」に寄稿させていただきました。
 
俳句は極楽の文学。
 
俳句を通し、宗教を感じていたい。
宗教を通し、俳句を感じていたい。
 
そんな思いで綴った文章。
kenshi
 

角川「俳句」7月号

2017-07-04
角川出版より冊子が届きました。
光栄なことに、全国の若手俳人の1人としてご依頼をいただいたもの。
 
「若手競泳&同時批評」
よかったら、ご覧下さい。
kenshi

角川『俳句』掲載作品 「精鋭十句競詠」 

「呼吸」     能美顕之
 
山茱萸の小さき呼吸始まりぬ
 
蘆の角風に高さを揃へたる
 
春の川へとふくらんでゆく日差し
 
芽柳に織り込まれゆく光かな
 
春の雪里の余白を埋めてゆく
 
淡雪を少し纏ふといふ風情
 
宇宙には国境の無く遠霞
 
一望の春田に大いなる息吹
 
遥かなる水平線の霞かな
 
仏法の深さに溺れ春炬燵
 
○略歴
昭和52年2月9日生 
『ホトトギス』所属
 俳歴6年 
 
○メッセージ
「声」
自然と対峙していますと、ふと自分の小ささを思います。そしてその小さな私が大自然の流れにほどけてゆくような、不思議な感覚にとらわれる事があります。「あなたはあなたのままでいい」と声が聞こえて来るような、一瞬。その一瞬は私の宝です。「人間も大自然の一部分」。自然の声に耳を澄まして参りたいと思います。

俳誌『俳壇』掲載作品

「一日」

 

青空の端に囀りのこぼれたる

 

大いなる卯浪に浮かぶ岬かな

 

一列の光整ふ植田かな

 

その中に孤高の色や花菖蒲

 

夏空へ赤子の声の立ち上がる

 

雨の来て重たき風の若葉かな

 

蛙の音大雨の夜を司る

 

 

○俳歴

 

能美顕之 

昭和五十二年二月九日生

二〇一〇年 日本伝統俳句協会入会

二〇一五年 ホトトギス同人

 「ホトトギス」所属

 
○コメント
 
自然と対峙していますと、ふと自分の小ささを思います。そしてその小さな私が大自然の流れにほどけてゆくような、不思議な感覚にとらわれる事があります。「人間も大自然の一部分」。自分の小ささを忘れず、謙虚に自然の声に耳を澄まして参りたいと思います。

 

 

朝日新聞(東日本版)掲載作品 「あるきだす言葉たち」

「風音」      能美顕之
     
上りゆく香に棚引く秋日かな
 
秋風の膨らむ路地や鞆の浦
 
曇天に存在感の紅葉かな
 
過る風留まる風や大紅葉
 
天も地も今渡りゆく鷹のもの
 
風音の去りて落葉の始まりぬ
 
落葉踏む音に生まるるリズムかな
 
太陽を乗せて散りゆく大銀杏
 
念仏の声風となる冬の堂
 
一斉に銀杏落葉の景となる
 
風が風呼んでゐるなり冬紅葉
 
大空と一つになりて日向ぼこ
 
 
能美顕之(のうみけんし)。1977年島根県生まれ。「ホトトギス」同人。
2015年日本伝統俳句協会新人賞。
 

住職の受賞作品

日本伝統俳句協会協会賞
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