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俳句入門講座

ようこそ 俳句の世界へ

住職の俳句

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合掌の心

2017-06-12
十薬の香りの高き白さかな
 
路線バス植田と空を抜けてゆく
 
合掌の心もて植う甘藷かな

火取虫

2017-06-11
人はみな人に惑ひて火取虫
 
ふと湧ける別れの予感花菖蒲
 
風音に深まる静寂五月闇

まっさお

2017-06-10
天に青地に紫陽花を置く寺に
 
句の道のかくも険しく青嵐
 
真青な空真青なあめんぼう

消息

2017-06-09
透明な夜にほうたるの光のみ
 
また一つ寺消えてゆく茂かな
 
蚊の声の消息を聞く闇夜かな

七色

2017-06-09
七色の呼吸のありて七変化
 
風もまた万緑に立ち止まるもの
 
余白なき心を五月晴に置く

住職原稿(日本伝統俳句協会機関紙「花鳥諷詠 一頁の鑑賞」)

凧揚げて来てしづかなる書斎かな    山口青邨

凧揚げて来てしづかなる書斎かな   山口青邨

(昭和十一年『ホトトギス雑詠選集』春の部より)

ふと気づけば空を見上げている事がある。空は平面に見えて、百三十五億年の深さを持ち、今も広がり続けている。その深さに溺れる。

 

本来、凧揚げは子供の遊びと言うよりも、部落対抗の凧合戦であった。喧噪の中、凧は風に乗り、部落を代表して戦う。やがて戦いに敗れ糸が切れ、ふらふらと落ちてゆく凧。そして勝ち誇ったかのように悠然と光を纏い、空中に残る凧。その勝敗の交差の後ろに、大いなる空は広がり続け、双方の凧の行方を見守っている。包んでいる。その限りない優しさを思う。

 

凧は人間の揚げるものではない。宙に舞い上がった瞬間、人間の手を離れ、風のものとなる。空のものとなる。その自然界の営みに人間は身を任せ、その行方に一喜一憂する。

 

作者はその喧噪から離れ、書斎に戻る。あまりにも静かな空間。それは人間の営みに戻る作者を包む、宇宙の静けさなのだ、と思う。

kenshi

 

中空にとまらんとする落花かな     中村汀女

中空にとまらんとする落花かな    中村汀女
(昭和十年『ホトトギス雑詠選集』春の部より)
「明日に向かって撃て」という映画がある。
ポールニューマン、ロバートレッドフォード演ずる伝説の罪人の逃避行を描いたもの。そのラストシーン、追い詰められた二人は警官隊待ちうける空間へ飛び出してゆく。映画はその瞬間のストップモーションで終る。
その美しさを私は忘れない。
 
美しいものに捉われた時、時が止まったように感じられる事がある。それは私自身の感覚と言うよりも、その対象物の力がそうさせるのであろう。はらりと散りゆく桜のゆらめきが、風を捉え、光を捉え、一番美しい状態となる。その瞬間に作者は捉われた。
桜は依然、地に向かいヒラヒラと舞っているのであるが、作者の時間は中空に留まる落花のまま止まっている。そのストップモーションに、作者は終りゆくものの究極の美しさを見たのであろう。
自らの命の儚さ、美しさを見たのかもしれない。
kenshi
 

飛び下りてふらここ空に揺れ残る   斉藤ただし

飛び下りてふらここ空に揺れ残る   斎藤ただし

(昭和十二年『ホトトギス雑詠選集』春の部より)

本年度で私の母校である小学校が閉校することになった。

校庭の片隅に古いふらここが佇んでいる。

空に向かい、一回転しようかというほど高く漕ぎ、遠くに飛ぶことを競っていた日々を思い出す。決まって晴天であった。

 「ふらここ」という季題は空を有していると思う。

その空は真っ青な空。漕ぐことでそのどこまでも広く、美しい空に近づく事が出来る。しかし決して触れることは出来ない。

作者も空を目指し、ふらここを漕いだ。風を切り、段々と角度を増し、やがては自らが風となってゆく。

空に触れられるかも、と飛び下りるがそこには空はない。

ふと振り返ると、真っ青な空をもてあそぶかのように、ふらここが揺れている。残っている。

作者はその景に憧憬する。自分は空に触れることも、感じることも出来ない。

空に残るふらここは、作者の永遠への憧れの象徴であろう。

kenshi

 

足もとの闇を過ぎりし落葉かな    友次郎

足もとの闇を過ぎりし落葉かな    友次郎

(昭和四年『ホトトギス雑詠選集』冬の部より)

 

私は高校一年生の夏、アメリカへ短期留学をした。

無謀であった。

三カ月ばかりの滞在であったが、言葉もろくに分からず、積るのは孤独感ばかり。夜がやって来ると、その闇の深さに溺れ、ただ日本を想った。

帰国のタラップを降り、感じた事。それは夜の明るさだった。

 

作者は音楽の勉強の為、フランスに渡り、パリ近郊のヴェジネという町からこの句を「ホトトギス」に投じた。静かなる夜道を歩く重い足もとには、孤独と望郷の念。それが闇を深くする。

その刹那、落葉が音を立てて過ぎった。

そこに、作者は日本を思い、力を得たのではないかと思う。

落葉」が闇の中の小さな光を得て、作者の暗い足もとを照らしてゆく。

ひらりひらりと異国の地で足もとを得ない作者に、落葉が「一人ではない」と囁いているような。

りなく余情の深い、季題の動かない一句である。

kenshi

日向ぼこして聞きわくる物の音      鈴木花蓑

日向ぼこして聞きわくる物の音    鈴木花蓑
(昭和十一年『ホトトギス雑詠選集』冬の部より)
 
普段聞こえない音が飛び込んで来る事がある。
それは決まって、空っぽになった時である。
 
日常の雑務や自分自身の感情の流れなど、何にも囚われず空っぽの静寂に身を置いた時、それは聞こえて来る。飛び込んでくる。
 
作者は日常を離れ、冬日に身を置いた。
冬のピンと張りつめた透明な大気は音をよく運ぶ。
 
風の囁き、木々の囁き、遠くの子供の声、差し込んでくる冬日の音までもが空っぽの身に飛び込んで来る。作者はそれを「聞きわくる」と表現した。
 
ただ、聞こえてくるのではなく、一つ一つの音が、命を持ち、作者の耳を満たす。色々な命の音の中で、その一部分として生かされる自らの呼吸の音を聞いておられるのだろう。
この句の季題は「日向ぼこ」でなければならない。
季題の有すやわらかさと、広がりがこの句のいのち。
 
この句は「日向ぼこ」が語っているのかもしれない。
kenshi

俳句入門講座17

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俳句入門講座15

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俳句入門講座14

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俳句入門講座13

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俳句入門講座12

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俳句入門講座1~11

俳句入門講座1~11
俳句の基本について仏婦会報「まなざし」にて連載しています。

住職の掲載作品

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角川「俳句」2月号

2018-01-31
角川「俳句」2月号
特集「高野素十の写生」に寄稿させていただきました。
 
俳句は極楽の文学。
 
俳句を通し、宗教を感じていたい。
宗教を通し、俳句を感じていたい。
 
そんな思いで綴った文章。
kenshi
 

角川「俳句」7月号

2017-07-04
角川出版より冊子が届きました。
光栄なことに、全国の若手俳人の1人としてご依頼をいただいたもの。
 
「若手競泳&同時批評」
よかったら、ご覧下さい。
kenshi

角川『俳句』掲載作品 「精鋭十句競詠」 

「呼吸」     能美顕之
 
山茱萸の小さき呼吸始まりぬ
 
蘆の角風に高さを揃へたる
 
春の川へとふくらんでゆく日差し
 
芽柳に織り込まれゆく光かな
 
春の雪里の余白を埋めてゆく
 
淡雪を少し纏ふといふ風情
 
宇宙には国境の無く遠霞
 
一望の春田に大いなる息吹
 
遥かなる水平線の霞かな
 
仏法の深さに溺れ春炬燵
 
○略歴
昭和52年2月9日生 
『ホトトギス』所属
 俳歴6年 
 
○メッセージ
「声」
自然と対峙していますと、ふと自分の小ささを思います。そしてその小さな私が大自然の流れにほどけてゆくような、不思議な感覚にとらわれる事があります。「あなたはあなたのままでいい」と声が聞こえて来るような、一瞬。その一瞬は私の宝です。「人間も大自然の一部分」。自然の声に耳を澄まして参りたいと思います。

俳誌『俳壇』掲載作品

「一日」

 

青空の端に囀りのこぼれたる

 

大いなる卯浪に浮かぶ岬かな

 

一列の光整ふ植田かな

 

その中に孤高の色や花菖蒲

 

夏空へ赤子の声の立ち上がる

 

雨の来て重たき風の若葉かな

 

蛙の音大雨の夜を司る

 

 

○俳歴

 

能美顕之 

昭和五十二年二月九日生

二〇一〇年 日本伝統俳句協会入会

二〇一五年 ホトトギス同人

 「ホトトギス」所属

 
○コメント
 
自然と対峙していますと、ふと自分の小ささを思います。そしてその小さな私が大自然の流れにほどけてゆくような、不思議な感覚にとらわれる事があります。「人間も大自然の一部分」。自分の小ささを忘れず、謙虚に自然の声に耳を澄まして参りたいと思います。

 

 

朝日新聞(東日本版)掲載作品 「あるきだす言葉たち」

「風音」      能美顕之
     
上りゆく香に棚引く秋日かな
 
秋風の膨らむ路地や鞆の浦
 
曇天に存在感の紅葉かな
 
過る風留まる風や大紅葉
 
天も地も今渡りゆく鷹のもの
 
風音の去りて落葉の始まりぬ
 
落葉踏む音に生まるるリズムかな
 
太陽を乗せて散りゆく大銀杏
 
念仏の声風となる冬の堂
 
一斉に銀杏落葉の景となる
 
風が風呼んでゐるなり冬紅葉
 
大空と一つになりて日向ぼこ
 
 
能美顕之(のうみけんし)。1977年島根県生まれ。「ホトトギス」同人。
2015年日本伝統俳句協会新人賞。
 

住職の受賞作品

日本伝統俳句協会協会賞
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