俳句入門講座
住職の俳句
薄暑
2018-05-16
日常をまっさかさまの朝寝かな
全身でわつと泣く人夏来る
一日の果てに佇む蜥蜴かな
玻璃越しに伸びる七色なる薄暑
母の日を片隅に置く車窓かな
さびしきは咲ききつてゐる牡丹かな
蛞蝓のぽつりと風の静かなる
新緑の雲たくましき白さかな
さへづりの雲の隙間にありにけり
ため息もこの夏空の一部分
春愁を遠ざけたくて星の下
快晴といふ春愁の一部分
空浅くして雲遠くして薄暑
一群の雲ほどけゆく薄暑かな
ビル群の端に一人酒なる夜長
夏帽を被れば詩の人らしく
歓声の消息にある大牡丹
吟行の涼しき声の集ふ寺
緑陰の人を寡黙にしてしまふ
吟行の皆緑陰を求めつつ
吟行の涼しき静寂ありにけり
緑陰に座れば自由なる心
珈琲の香に老鶯の紛れ込む
万緑を背に俳人の小さきこと
吟行の夏帽ぷかりぷかりかな
吟行は人を自由に夏の寺
別世界なる万緑の寺なりし
万緑に別の時間のあるやうな
石庭のその先にある緑陰へ